以下の文章は、エンゲルス[著]『家族・私有財産・国家の起源』(戸原四郎[訳]、岩波文庫、1965年)のなかで、国家の起源をあつかった部分(pp.224-230)である。
マルクス主義が国家をどのように見ているかがよくわかる。社会契約説(天賦人権論)とは異なった国家観が展開されている。

マルクス主義が国家をどのように見ているかがよくわかる。社会契約説(天賦人権論)とは異なった国家観が展開されている。

2018.11.17 | ├ 政治の基本 | トラックバック(0) | コメント(0) |
下図は、ビュシ=グリュックスマン[著]『グラムシと国家』(大津真作訳、合同出版、1983年)130ページに載っている「上部構造の方法論的二分割図式」で、グラムシの国家観を示したもの。

マルクス主義の国家観は、レーニンの『国家と革命』以来、国家とは、支配階級の強制装置=権力装置としての国家(□の部分)と考えてきたが、イタリア共産党のグラムシは、それは帝政ロシアのような民主主義の未発達な国の場合であり、西欧の民主主義国家は、ヘゲモニー装置=被支配者の同意の組織者としての国家(□の部分)でもあり、両者を統合して見なければならないと考えた。

マルクス主義の国家観は、レーニンの『国家と革命』以来、国家とは、支配階級の強制装置=権力装置としての国家(□の部分)と考えてきたが、イタリア共産党のグラムシは、それは帝政ロシアのような民主主義の未発達な国の場合であり、西欧の民主主義国家は、ヘゲモニー装置=被支配者の同意の組織者としての国家(□の部分)でもあり、両者を統合して見なければならないと考えた。
2018.10.30 | ├ 政治の基本 | トラックバック(0) | コメント(0) |
IV. 政治と法
1.法の特質
(1)社会規範
スポーツにルールがあるように、社会にも他人との共同生活を円滑に行うためのルールが必要であり、これを社会規範という。社会規範の種類としては、道徳・慣習・伝統・風習・法などがある。
(2)社会規範と制裁
社会規範とは、社会生活をうまく営むうえで必要な一定の行動様式であるから、その守るべきとされる行動様式を破ると、何らかの形で制裁をうける。
(3)法と道徳
法と道徳とは、次の2点で異なる。
- 法は、社会秩序を破る行動を規制する外面的規律であるが、道徳は、動機の純粋さなど人間の内面のあり方を規制する。
- 法は、政治権力によって強制的に実効化されるが、道徳はその遵守を個人の良心に委ねて、権力による強制力を加えることはできない。
しかし、法はその根底において、道徳的原理にもとづくものが多い。たとえば、刑法上、犯罪とされている殺人・窃盗などは、道徳的にも是認できない反倫理的行為である。
このことから、法は、道徳の最小限を保障し、政治権力によって強制された社会規範であると言える。
2.法の支配
(1)人の支配から法の支配へ
古代ギリシアの哲学者プラトン(前427~347)の「哲人政治」のように、人格・能力ともにすぐれた哲学者が国王となって国民を導くのは、能率もよく理想的かもしれない。しかし、歴史の教訓として、絶対的権力を一手に握った人物は腐敗し、私利私欲のために権力を濫用するようになる。そこで、このような恣意的な人の支配よりも、権力者の上に法をおき、権力行使もその法に従わなければならないとしたほうが、国民の自由や権利を確実に保障することができる。これを法の支配という。
(1)社会規範
スポーツにルールがあるように、社会にも他人との共同生活を円滑に行うためのルールが必要であり、これを社会規範という。社会規範の種類としては、道徳・慣習・伝統・風習・法などがある。
(2)社会規範と制裁
社会規範とは、社会生活をうまく営むうえで必要な一定の行動様式であるから、その守るべきとされる行動様式を破ると、何らかの形で制裁をうける。
(3)法と道徳
法と道徳とは、次の2点で異なる。
- 法は、社会秩序を破る行動を規制する外面的規律であるが、道徳は、動機の純粋さなど人間の内面のあり方を規制する。
- 法は、政治権力によって強制的に実効化されるが、道徳はその遵守を個人の良心に委ねて、権力による強制力を加えることはできない。
このことから、法は、道徳の最小限を保障し、政治権力によって強制された社会規範であると言える。
2.法の支配
(1)人の支配から法の支配へ
古代ギリシアの哲学者プラトン(前427~347)の「哲人政治」のように、人格・能力ともにすぐれた哲学者が国王となって国民を導くのは、能率もよく理想的かもしれない。しかし、歴史の教訓として、絶対的権力を一手に握った人物は腐敗し、私利私欲のために権力を濫用するようになる。そこで、このような恣意的な人の支配よりも、権力者の上に法をおき、権力行使もその法に従わなければならないとしたほうが、国民の自由や権利を確実に保障することができる。これを法の支配という。
(2)法の支配の発達
イギリスはヨーロッパでは国王の権力が強い国であった。封建領主たちは、都市民の協力を得て、1215年に国王の権力を制限するマグナ=カルタ(大憲章)を国王に認めさせた。しかし、それを国王が無視したので、ブラクトンは「国王といえども神と法の下にある」と主張した。17世紀、エドワード=クック(コーク)が、コモン=ロー(全国に共通な慣習法をとり入れた判例法)は国王に優越すると主張し、「権利請願」を起草した。1642年からのピューリタン革命、1688年の名誉革命を経て、1689年に「権利章典」が出され、議会制定法が国王に優越することが確立した。こうして、法は国民の自由や権利を守るために権力者の権力を制限するものであるという原理が成立した。
アメリカでは、1787年に世界最古の成文憲法であるアメリカ合衆国憲法が制定され、最高法規となった。そして、1803年のマーベリー対マディソン事件を契機に、最高法規である憲法に違反する法を裁判所が無効にできる違憲審査制が判例として成立した。
(3)法治主義
イギリスやアメリカに対して、ヨーロッパ大陸諸国、とくにドイツで法治主義が発展した。法治主義は、「悪法も法なり」という言葉が表わすように、法律にもとづいてさえいれば、国民の自由や権利を圧迫してもよいという法律万能主義に陥ることがあった(形式的法治主義)。とくに、ナチス政権下では、国民の自由と権利を制限・抑圧する法が数多く制定された。そのため、第二次世界大戦後には、法は、国民の代表者が制定し、国民の自由と権利を保障するものでなければならないとする実質的法治主義に改められた。
2016.07.03 | ├ 政治の基本 | トラックバック(0) | コメント(0) |
III. 政治と国家
1.国家とは何か
(1)国家の特質
国家とは、社会全体(領域)の公共の秩序を維持・管理するためにつくられた特殊な社会集団である。主権をもつことによって組織的強制力を独占し、国家意思は国民全体・領土全体におよぶ。
(2)国家の三要素
国民・領域・主権を国家の三要素という。
国家の領域は領土・領海・領空の三つを指す。領土は国家の基盤となる土地、領海は領土のまわりの主権の及ぶ海域、領空は領土と領海の上空をいう。領海の範囲は、国連海洋法条約で12海里、排他的経済水域は、沿岸国が漁業を含む天然資源を優先的に利用でき、200海里までと定められた。(1海里=1852m)。
(3)国家と主権
国家は主権を持っている。主権にはつぎの3つの基本的意義がある。
- 最高独立性…国家が外部に対して独立している:「主権国家」という場合。
- 統治権…国家が内部に対して行使する権力:「主権の及ぶ範囲」という場合。
- 最高決定権…最終的に決定する力を誰が保持しているのか:「国民主権」という場合。
ジャン=ボーダン(1530~96)は、主権について最初に体系的に理論づけたフランスの哲学者・政治学者である。『国家論六書』のなかで、主権の内容を、立法・宣戦講和・官吏任命・裁判・忠誠誓約・恩赦・貨幣鋳造・課税の8種とし、この主権を君主が行使するとした。主権の絶対性を説くとともに、君主主権を主張して絶対王権を理論づけた。
しかし、今日では、主権国家も国際法や国際連合の意思に服することが求められている。これらの国際社会の規範は、各国の合意のうえで決定されたものであるから、こうした傾向を「主権の自己制限」という。
2.国家にかんする諸説
(1)国家の起源
国家がいつごろ、どのようにして生まれたかについては、国によっても異なっているので、種々の説がある。
- 神権説…国家は神によって造られたもので、君主の権力は神から授けられたものであるとする説。⇒王権神授説:フィルマー、ボシュエら。
- 契約説…人民の合意と契約によって国家が成立したとする説。⇒社会契約説:ホッブズ、ロック、ルソーら。
- 階級説…階級社会の成立にともなって、支配階級が他の階級を抑圧・支配する機関として国家が生まれたとする説。…マルクス、エングルスら。
- 征服説…強大な種族が弱小の種族を征服・支配することによって国家ができたとする説。…オッペンハイマーら。
(2)国家のとらえ方
次のような理論が代表的である。
- 一元的国家論…国家を、他の集団を超越し包括した絶対至高の価値をもつ全体社会とみる。プラトン、アリストテレス、ヘーゲルらが主張。
- 国家有機体説…国家を、生物のような有機体とみる考え方で、個人(部分)は国家(有機体)と結合することで生きられるとする。プラトン、スペンサーらが主張。
- 多元的国家論…国家も他の社会集団と同列・同価値の一つの社会集団で、社会統合の役割をになう特殊な機能集団の一つにすぎないとする。マッキーバー、ラスキらが主張。
- 階級国家論…国家を支配階級による被支配階級抑圧の機関とみる。マルクス、エングルスらが主張。
(3)近代国家の分類
近代以降の国家を機能の面から分類すると、次のようになる。
分類 | 時代 | 特色と性格 |
夜警国家 (自由国家・消極国家) | 資本主義の確立期 18~19世紀 | 国家の任務を,治安や国防など最小限のものとし、市民社会は国家の干渉のない自由放任がよいとされた。 |
福祉国家 (社会国家・積極国家) | 混合経済体制の段階 20世紀 | 国家が貧富の差の拡大の是正など、社会的弱者の生活を保障して、国民生活の福祉や公正をはかろうとする。 |
※ 夜警国家は、ドイツの社会主義者ラッサールが、公正・中立と思われている国家が、実はブルジョアジーの財産を保護する階級国家であると非難して名付けたもの。
2016.07.03 | ├ 政治の基本 | トラックバック(0) | コメント(0) |
II. 政治と権力
1.権力の種類と特徴
(1)社会権力
人間の集団に広くみられる他の人間を支配する権威ある力を社会権力という。たとえば、学校での退学処分、企業での懲戒解雇や免職、宗教団体での破門などが、その例である。
(2)政治権力
社会権力のなかで、政治的に行使されるのが政治権力である。通常、権力といえば、政治権力をさす。近代になって、国家が軍隊・警察・刑務所のような物理的実力装置=暴力装置を独占し、政治権力は国家権力となった。
2.権力の正統性2>
(1)権力の正統性
国家権力には、実力行使が認められ、投獄・処刑さえも許されている。これは、国家権力が正統(正当)とみなされ、人々はそれに従うことに同意・承認しているからである。
国家権力は絶大な実力をもっているが、むきだしの実力だけで支配したならば、反発をうけ、その支配は短命に終わるだろう。政治権力への人民の自発的支持による正統性(正当性)が大きいほど、その支配が安定するということを意味している。
(2)支配の正統性
ドイツの社会学者マックス=ウェーバー(1864~1920)は、支配の正統性について、次の三つのタイプをあげている。
- 伝統的支配…万世一系の君主のように歴史的伝統によるもの。
- カリスマ的支配…超人的能力をもつカリスマによるもの。
- 合法的支配…被支配者がみずから選んだ代表者によって構成される議会で定めた法によるもの。
2016.07.03 | ├ 政治の基本 | トラックバック(0) | コメント(4) |
I. 政治の機能
1.社会と政治
社会的動物としての人間
人間は、集団(家族)のなかに生まれ、集団(地域・学校・企業など)のなかで育ち、生活していく社会的動物である。ギリシアの哲学者アリストテレス(前384-前322)は、著書「政治学」のなかで、「人間はポリスをつくる動物である」と述べている。ギリシアの都市国家ポリスは共同社会であると同時に国家でもあり、ポリス的動物とは、「社会的動物」と「政治的動物」という二つの意味を含んでいる。
2.政治の機能
(1)対立がおこる原因
社会は、相互依存の関係にあるが、対立の関係になることもある。その原因は、富や地位・名誉など、社会的に価値のあるものには限りがあり、自由意思をもつ人々の全員が平等に手に入れることができない点にある。
(2)政治の機能
対立が紛争や戦争状態にいたると、無秩序や社会解体に陥る。そこで対立を調整して社会の秩序を維持し、社会の統治をはかる役割が必要となる。これが政治の機能であり、政治の必要性の根拠である。

2016.07.03 | ├ 政治の基本 | トラックバック(0) | コメント(0) |