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この事故、「うっかりハイマツに縛り付けたらポキン!」事故として有名だそうですが、じつはそうではなかったのが裁判で明らかになったそうです。

この事故の事実の概要は…。
〔事実の概要〕

 札幌市内在住の会社員Aは,2011(平23)年1月31日,友人2名と共に,スノーボードをする目的で,後志管内積丹町の積丹岳(1,255メートル)に入山したが,同日午後,友人とはぐれ,下山を試みるも道に迷い,山頂付近でビバーク(野営)した。

 道警と消防が,翌2月1日早朝より捜索していたが,正午頃,Aは道警遭難山岳救助隊に発見された。しかし,隊員がAを抱き抱えて移動中,足元の雪庇を踏み抜いて,隊員3名とともに斜面を滑落した。隊員はAを探索・発見してストレッチャー(ソリ)に収容し崖上へ引き上げようとしたが,引き上げ作業中,再びAがストレッチャーごと滑落し,悪天候もあって救助隊は同日の捜索を断念した。

 翌2日朝,Aは崖下でストレッチャーに固定された状態で発見され,航空隊のヘリコプターで病院に搬送されたが,死亡(凍死)が確認された。

 Aの両親Xらが,Aの死亡は救助隊員の救助活動上の過失によるものとして,北海道に対して,父・母に各々4300万円余の国家賠償の支払いを請求して訴訟を提起した。

判例研究:長尾英彦「遭難者の救助活動における過失」
中京法学第48巻(2013年度)第3・4号合併号

この事故、新聞などでは、「うっかりハイマツに縛り付けたらポキン!」と折れたと報じられていた。


 滑落した機動隊員三人は、Aさんを救助用ソリに乗せ、二人がロープで引っ張り、二人がソリを押す形で急斜面を上り始めた。

 しかし、五〇メートル登るのにも一時間かかったため、ロープを引っ張る二人のうち一人を交代させようと、二本のロープを一時、斜面に生えていたハイマツに結び付けた。その枝が折れて、Aさんのソリが滑り落ちたという。

しかし、ロープの結び方が悪く、それで解けたことが裁判で明らかになった。
〔註〕

 2度目の滑落は,Aをストレッチャーに収容した後,(隊員の体力の消耗が激しいので)引き上げ作業に当たる隊員を交替するため,一時的にストレッチャーを側の木の枝に縛りつけたところ,縛り方が不十分だったため発生したもの,と判決は認定している(新聞記事中では,結びつけた枝が「折れた」と記されているが,実際にはロープが枝から抜けてしまったもので,「折れた」というのは誤りと思われる)。

 しかし,判決は,Aの死亡の直接の原因は,最初の滑落によって健康状態を著しく悪化させたことだと見ているため,2度目の滑落については詳しい検討を加えていない。

《「折れた」というのは誤り》なんて書いてあるが、新聞社が自分から事実を曲げて書くわけないから、北海道警がそう発表したんだろうな。もちろん、「調査報道」という言葉も存在するんだけどね。

しかし、この「註」にもあるように、このことは裁判に影響を与えていない。←山屋さんたちは「こっちの方が問題だろ!」と突っ込んでいるんだけどね。

〔判決〕

 (前略)そして,本件救助活動についてみるに, 救助隊員がAを発見後,Aの健康状態や体力の消耗の様子を見てその場でビバークせず, 直ちに移動を開始したこと,救助隊が登山してきたルートを通らず,登山道に沿って最短ルートで移動しようとしたこと等は,特に問題視することはできないと判断した。

 しかし,最初にAを発見した場所のすぐ近くに雪庇があり,進行方向が少しぶれると,これを踏み抜く虞があることを認識しながら,常時コンパスで位置を確認しながら進むというような慎重な方法をとらなかったため,視界がきかなかったこと,足元が悪かったこととも相俟って,雪庇を踏み抜き滑落に至ったこと(これによりAの健康状態は著しく悪化し,たとえその後,ストレッチャーを引き上げていたとしても死亡していた蓋然性が高い,と認定した)を指摘し,

「よって, 救助隊員が合理的な進行方法をとらなかったことと[A]の死亡(凍死)との間には因果関係があるというべきである」

と結論づけた。

まあ、Aさんの行動が次のようにアレなので、

Aが登山当日,天気が崩れる可能性が高いと認識しながら山頂まで登山を敢行したこと,冬季の積丹岳は天候の変化が早いことを知っていたのに天気予報を十分確認しなかったこと,ビバークに適さない山頂付近でビバークしたこと,下山方向を誤ったこと,破れやすいツェルトによるビバークをしたため低体温症に罹患したこと,雪庇に近い場所でビバークしたため救助隊員が雪庇を踏み抜く過失を誘発したこと等も,Aの死亡の原因をなしている

8割減額されて、約1200万円の賠償にとどまった。

そして、あの事件についても触れている。

〔付記〕

 2013(平25)年12月1日,富士山御殿場ルート9.5合目付近で男女4人が滑落する事故があり,静岡県警のヘリコプターが救助に向かったが,同日午後の救助活動中,このうちの男性1名をヘリで吊り上げた際(この時点では,この男性は言葉は発せないが,手を動かして反応していたという),用具が外れて,高さ3メートルから男性を落下させた。再度吊り上げようとしたが,強風・乱気流と隊員の体力の消耗が激しかったため断念。翌2日にヘリで救助し病院に搬送したが死亡が確認された。県警は「あってはならない誤り」と謝罪した。このケースであれば,過失が認定されてもやむをえないかと思われる。

オイラ的には、こっちの方も静岡市消防局の発表が怪しい、と思っているんだけどね。

意識はあったのか?

2016.01.29 | 登山 | トラックバック(0) | コメント(0) |












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