長尾和宏[著]『長尾先生、「近藤誠理論」のどこが間違っているのですか? ~絶対に後悔しないがん治療~』(ブックマン社、2015年)



長尾和宏さんは、

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といった感じで、認知症関連で知った。たまたま

斎藤貴男[著]『子宮頸がんワクチン事件』(集英社、2015年)

を探していたら、上記の本があったので、買ってしまった。もちろん、『子宮頸がんワクチン事件』も買いましたよ。w

近藤誠は、逸見政孝さんがスキルス胃がんで亡くなったとき、マスコミに登場して発言していたので、知っていた。そして、近藤誠[著]『患者よ、がんと闘うな』(文藝春秋、1996年)も、母親が買って読んでいたので、読んでいた。1990年代半ばに、母親が健康診断でレントゲンを撮ったら、肺に影があるので、精密検査のため、某病院(オイラの生まれた病院。現在はがん専門病院)に入院して調べたが、結局、何でもなかった、という事件があった。そのころ、心配になって買ったのだと思う。
この本は、近藤誠“がんもどき理論”&“がん放置療法”批判の本である。この本の中心は、第2章「私は、手術も抗がん剤もしたくありません。近藤誠さんの本を読んだからです。間違っていますか?」で、p.212に「本章のまとめ」が載っているので、引用する。

  1. がんもどき(的なもの)も本物のがんも実際に存在するが、どちらかしか存在しない、という近藤誠氏の単純二元論は明らかに誤りである。現実の多くのがんはその間にある。また、近藤氏の言うがんもどきのようなものが経過のなかで、本物のがんに変化することはいくらでもある。

  2. 早期胃がんは確かに存在する。「早期発見、早期治療に意味はない」という近藤氏の主張は誤りである。

  3. 〈がんもどき理論〉に基づく〈がん放置療法〉は、極論である。それを日本人全員に適応させようとすれば、国民を不幸にする。事実、近藤誠本を読み、極論を信じた結果、犠牲者が出てきているので看過できない。ただし、高齢者や要介護者などに見つかったがんは、その臓器や進行度によっては、放置したほうがいい場合がいくらでもあることは、すでに医療界の常識である。

  4. 極論本がいくら売れようが論文で科学的根拠を示さなければ、学術界で認められることはない。

  5. 時代は古典的抗がん剤の時代から分子標的薬に移行しつつある。さらに分子標的薬も第二世代が登場している。驚くほど高い奏功率を誇る薬も登場し、その恩恵に預かれる患者さんが増えつつある。

  6. 抗がん剤治療は臓器別から、遺伝子検査に基づく遺伝子別の分子標的治療に移行しつつある。また遠からず、がん幹細胞療法やまったく新しい機序の免疫療法などが臨床応用されるだろう。

  7. それでもいつか抗腫瘍効果が低下する時期が来るので、あらゆる抗がん治療は、“やめどき”が重要である。つまり延命と縮命の分水嶺を自分や家族が感じて、医師とよく相談することが大切。医師の言いなりになったり“やめどき”を間違えたりすると、いくらいい治療でも後悔だけが残る。

  8. 近藤誠氏の本が売れるのは、現在のがん医療への国民の不満を代弁しているから。がん医療界は、こうした国民の声を無視せず、自己批判し真の意味での患者中心の医療に変容すべきである。たとえば25年も前から謳われている「がんと診断された時からの緩和ケア」を実現すべく努力すべきである。

  9. 出版界は、“売らんかな主義”に先行した極論本やトンデモ本の出版に対して、モラルハザードを持つべきである。一方、国民は極論本を鵜呑みにせず、情報リテラシーを持つ努力をし、医者のいいなりにならずに自己主張してほしい。医療のいいとこ取りができる、賢い患者を目指してほしい。


「モラルハザード」は「倫理の欠如」の意味なので、「モラルハザードを持つべき」は「モラルを持つべき」のマチガイだ。w

近藤誠はトンデモだけど、トンデモをのさばらせる原因が医療界全体にあるのも事実、というのが長尾さんの主張である。以下の表は、近藤誠、長尾和宏、医療界全体のちがいを表わしている。





叔父(母の弟)が3年前に食道がんで亡くなったのだが、この本で説明されている中村勘三郎さんの死によく似ていた。食道を全摘して胃を吊り上げて直結させると、誤嚥性肺炎を起こしやすくなる。叔父も勘三郎さんも、肺炎になり、手術後1か月で亡くなった。桑田佳祐さんも、同じく食道がんだったが(しかも勘三郎さんと同じ医師が執刀)、回復して活躍している。このようなリスクが医療には常につきまとうのだ。

ちなみに、近藤誠“がんもどき理論”だと、叔父や勘三郎さんは“ホンモノのがん”で、桑田さんは“がんもどき”となる。生還したら“がんもどき”、亡くなったら“ホンモノのがん”って、完璧な「後出しジャンケン」だ。笑えるのは、近藤誠が、手術と抗がん剤を批判していたくせに、勘三郎さんは抗がん剤が効いてがんが半分くらいに小さくなったので、このまま“放置”すれば死なずに済んだと書いていること。抗がん剤は「毒」なんじゃないのか?←と長尾さんも突っ込んでいる。

がん治療は、「10年ひと昔」といわれるほど、進歩している。近藤誠は30年前の逸見さんの死が今でも起きるように書いているのが、問題だ。←と長尾さんは指摘する。

オイラががんになるかどうか分からないけど、がんになったら読むべき本の1つだろう。

2016.03.09 | | トラックバック(0) | コメント(0) |












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