IV. 政治と法


1.法の特質


(1)社会規範


 スポーツにルールがあるように、社会にも他人との共同生活を円滑に行うためのルールが必要であり、これを社会規範という。社会規範の種類としては、道徳・慣習・伝統・風習・法などがある。

(2)社会規範と制裁


 社会規範とは、社会生活をうまく営むうえで必要な一定の行動様式であるから、その守るべきとされる行動様式を破ると、何らかの形で制裁をうける。

(3)法と道徳


 道徳とは、次の2点で異なる。
  1. 法は、社会秩序を破る行動を規制する外面的規律であるが、道徳は、動機の純粋さなど人間の内面のあり方を規制する。
  2. 法は、政治権力によって強制的に実効化されるが、道徳はその遵守を個人の良心に委ねて、権力による強制力を加えることはできない。
 しかし、法はその根底において、道徳的原理にもとづくものが多い。たとえば、刑法上、犯罪とされている殺人・窃盗などは、道徳的にも是認できない反倫理的行為である。
 このことから、法は、道徳の最小限を保障し、政治権力によって強制された社会規範であると言える。

2.法の支配


(1)人の支配から法の支配へ


 古代ギリシアの哲学者プラトン(前427~347)の「哲人政治」のように、人格・能力ともにすぐれた哲学者が国王となって国民を導くのは、能率もよく理想的かもしれない。しかし、歴史の教訓として、絶対的権力を一手に握った人物は腐敗し、私利私欲のために権力を濫用するようになる。そこで、このような恣意的な人の支配よりも、権力者の上に法をおき、権力行使もその法に従わなければならないとしたほうが、国民の自由や権利を確実に保障することができる。これを法の支配という。


(2)法の支配の発達


 イギリスはヨーロッパでは国王の権力が強い国であった。封建領主たちは、都市民の協力を得て、1215年に国王の権力を制限するマグナ=カルタ(大憲章)を国王に認めさせた。しかし、それを国王が無視したので、ブラクトンは「国王といえども神と法の下にある」と主張した。17世紀、エドワード=クック(コーク)が、コモン=ロー(全国に共通な慣習法をとり入れた判例法)は国王に優越すると主張し、「権利請願」を起草した。1642年からのピューリタン革命、1688年の名誉革命を経て、1689年に「権利章典」が出され、議会制定法が国王に優越することが確立した。こうして、法は国民の自由や権利を守るために権力者の権力を制限するものであるという原理が成立した。
 アメリカでは、1787年に世界最古の成文憲法であるアメリカ合衆国憲法が制定され、最高法規となった。そして、1803年のマーベリー対マディソン事件を契機に、最高法規である憲法に違反する法を裁判所が無効にできる違憲審査制が判例として成立した。

(3)法治主義


 イギリスやアメリカに対して、ヨーロッパ大陸諸国、とくにドイツで法治主義が発展した。法治主義は、「悪法も法なり」という言葉が表わすように、法律にもとづいてさえいれば、国民の自由や権利を圧迫してもよいという法律万能主義に陥ることがあった(形式的法治主義)。とくに、ナチス政権下では、国民の自由と権利を制限・抑圧する法が数多く制定された。そのため、第二次世界大戦後には、法は、国民の代表者が制定し、国民の自由と権利を保障するものでなければならないとする実質的法治主義に改められた。

2016.07.03 | ├ 政治の基本 | トラックバック(0) | コメント(0) |












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://kitsunekonkon.blog38.fc2.com/tb.php/7253-694667b9