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…との記事を金子洋一氏が書いている。

TPPについてもこうした反証不可能な「霊感商法」がまかり通っています。「TPPに参加すればこんなに悪いことがおきるぞ」という「お告げ」にもいろいろなものがあります。ここでは貿易の自由化で影響を受けることが予想されるさまざまな圧力団体が「霊能者」の役割を演じています。国民皆保険の解体、食品安全、ラチェット条項、外国人労働者の無秩序な流入に対するおどろおどろしい警告。書店に行けば扇情的なタイトルの反TPP本が平積みになっています。

その中でも、ここではISD条項(国家対投資家の紛争処理条項。別名、ISDS条項)に絞って取り上げます。このISD条項はInvestor(投資家)対State(国家)の紛争解決に関する条項、つまり企業や投資家が国家を訴えることができるという条項で、投資家や企業が相手国に不平等な扱いを受けたときなどに相手国をその企業が訴えることができるというものです。日本政府も、法的制度が整わない発展途上国に対して投資や貿易をおこなう際にはぜひ必要だと考えている制度です。

     (中略)

まず、最も大切なことは、ISD条項はTPPではじめてわが国に導入されるものではないということです。

わが国では既に30近い国々と投資協定などを締結していますが、ISD条項は、先方がその採用を拒否したフィリピンを対象とする協定以外にはすべて含まれています。しかし、わが国政府が訴えられた例は過去に一例もありません

     (中略)

TPP反対派が、ISD条項が治外法権に他ならないものであることを示すためによく例に挙げているのが、カナダ連邦政府を米国化学企業の現地子会社が訴えた事案です。この子会社はメチルマンガン化合物(MMT)を製造していました。1997年加連邦政府がMMTの流通を禁ずる新法を作ったところ、米企業がそれにより甚大な被害をこうむったとして2億5100万ドルの支払いを求めて加連邦政府を訴えました。

この件は、同時並行でカナダ・アルバータ州が、新法が国内通商協定(AIT)に違反するとして専門委員会に提訴し、委員会での検討の結果、新法は国内通商協定に違反すると認定されました。また、MMT自体については流通を完全に禁止する必要のあるような危険な化学物質ではないことも明らかになりました。この専門委員会の判断をカナダ連邦政府は受け入れ、翌年法律を廃止することになりました。それに伴い連邦政府は米社に仲裁費用と遺失利益として和解金1300万ドルを支払いました。

これで明らかなように、カナダが連邦制という特殊な政体を採っていることから生じた政府の失策により、禁止すべきでない化学物質の流通を十分な検討もなしに誤って禁止したことが原因であり、ここから化学物質に対して十分な検討をせず規制を課すべきではないという教訓を引き出すなら分かりますが、TPP反対派の主張しているような「カナダ国内で禁止されている有害な化学物質を強制的に輸入させられ、かつ法外な和解金をむしり取られた」という表現はミスリーディングであることはいうまでもありません。この例は、むしろ逆に投資先国(この場合はカナダ)のあやまった規制からわが国の企業を守る上でISD条項が大変有効であるということを示しているわけです。

過去に米国には日本製品を狙い撃ちしようとしたスーパー301条と呼ばれる法律がありました。このような法律が、例えば日本車に対して制裁と称して、販売方法や税金の扱いで不当な規制を行ったとき、ISD条項があれば、トヨタ、日産などの日本車メーカーはアメリカ政府を訴えることができることになります。スーパー301条はあまりにも保護貿易的な法律ですから、訴訟でも日本車メーカーが有利でしょう。

     (中略)

トランプ政権ではTPPを推進しないという報道があります。しかし、トランプ氏は徐々に現実化していると考えており、近い将来実質的にTPP推進に舵を切りなおすことだろうと予想します。先進国である米国にとっても貿易の自由化のメリットに加えて、アジアでの貿易のルールを中国に先んじて作るという対中国外交の観点からのメリットも大きいからです。

TPPのISD条項をめぐってまかり通る「霊感商法」

つまり、SDI条項は日本にとっては、プラスにはなるが、マイナスにはならない、ということである。

これは、ある意味、正しい。しかし、SDI条項のもう一つの顔について、金子氏はこのように書いている。

投資家が国家を訴えた訴訟については、少し前のデータですが、2010年末までに全世界で390件あり、トップは、対アルゼンチンの51件、続いて対メキシコ、チェコ、エクアドル、カナダ、ベネズエラと続きます。対米国の訴訟は対ウクライナと並んで14件で同率7位。くどいようですが対日本はゼロです。上位には北米を除き発展途上国がずらりと並びますが、この状況をみれば、ISD条項導入はわが国企業が法律の整わない発展途上国で活動する上で有益なものとなるであろうことは誰もが予想できることです。

「法律の整わない発展途上国」と金子氏は書いているが、生産力が低く、ゆえに保護貿易を必要とする発展途上国のマチガイではないのか? 1960年代に多国籍企業が発展途上国に進出し、めちゃくちゃな搾取をして問題になり、それができないように途上国が法整備をした。しかし、1980年代以降、途上国が債務危機に陥ると、世界銀行が金を貸すかわりに、通商条約にSDI条項を設けるように脅しつけて、強引に導入させた。つまり、弱肉強食のグローバリズムの象徴がSDI条項なのだ。

SDI条項が「日本」にとって有利だから導入しようは、ある意味、正しい。しかし、それは、日本企業という強者にとって有利なのであって、日本全体は強者ばかりではない。グローバリズムが弱者を踏みつけにしてきた結果が、“BREXIT”であり、「トランプ勝利」なのだから、安易にSDI条項のような強者の論理を押し付けて良いのか議論が必要だろう。

2016.11.16 | ├ 経済ネタ | トラックバック(0) | コメント(0) |












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