グロービス経営大学院教員の森生明氏が「豊洲移転問題に見るファイナンス・リテラシーの壁」という記事を書いている。

ファイナンスを学ぶ際、例えばグロービス経営大学院ではケーススタディを通じて「油田発掘プロジェクトAは初期投資が少ないが埋蔵量も少なく、Bはその逆。どちらを採用すべきか」「A社はX社を買収すべきか、それとも設備投資を増やして自力成長を目指すべきか」「A社は自社生産を外部アウトソースに切り替えるべきか」という意思決定の訓練を繰り返し行います。それらの分析の王道(というか唯一の判断基準)は、「それぞれの計画案の総投資額とそのプロジェクトが将来にわたって生み出すキャッシュフローの正味現在価値(Net Present Value, NPV)を計算して、NPVの高い方のプロジェクトを選択する」という方法です。

築地市場に投資して再整備するか、豊洲へ移転するか、という問いは上記のケーススタディの応用事例にすぎません(公共事業なのでどちらのNPVもマイナス、どちらがより小さいか、となるかもしれませんが)。

この基本動作を行なっていたのなら、石原元都知事は当時の比較分析資料を開示して、客観的合理的に移転判断をした、と言えば済む話です。さらに、もし豊洲移転案のNPVが築地に留まる案のNPVを数百億円単位で上回るという結果なら、たとえ土壌汚染費用が当時の前提値より数百億円余計にかかったとしても豊洲移転は正しい判断だと突っぱねることができます。

このように、プロジェクトが生み出す将来キャッシュフローの見通しを立て、全てを数値化して比較検討する、というアプローチは欧米では当たり前です。なぜなら行政であれ経営者であれ、そうすることが「説明責任を果たす」上で最も有効であることをわかっているからです。

戦略や計画を数字にして示し、意思決定プロセスを透明化し、説明責任を果たす」、これがファイナンスという学問の担う役割です。そして、説明する側も説明を受ける側もそのツールを理解し共有していることが、「ファイナンス・リテラシー」といわれる意思決定のための基本インフラなのです。

豊洲移転問題に見るファイナンス・リテラシーの壁

4月8日(土)に、市場問題プロジェクトチームの一部メンバーが、築地建て替え案を市場関係者に提示したものの、その一部しか参加してもらえなかった。そこで示された「豊洲移転案」が、あいかわらず、減価償却費を含む「損益計算書」をつくり、「60年間の累積赤字額 約11,420億円」という《豊洲に行ったらたいへんですよ!》的なものだった。



逆に、豊洲建て替え案は、さんざん検討して「やっぱり、できない」と判断されたのに、《簡単に安くできますよ!》的なものだった。

前者については、

サンクコストはお金の出ていかない費用

で批判していたが、森生氏のように、《プロジェクトが生み出す将来キャッシュフローの見通しを立て、全てを数値化して比較検討する》ことを希望する。そのためにも、将来の「損益計算書」だけでなく、将来の「キャッシュフロー計算書」も作成し、キャッシュアウトフロー(CF-OUT)の現在価値とキャッシュインフロー(CF-IN)の現在価値とを比較して欲しいのだ。これを築地建て替え案と豊洲移転案でそれぞれ作成し、比較検討すれば良いだけなのだ。

2017.04.10 | 時事ネタらしきもの | トラックバック(0) | コメント(0) |












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