フランス大統領選で、極右政党・国民戦線のルペン候補を破って、中道系独立候補のマクロン候補が大統領となった。

 【パリ時事】今後の欧州連合(EU)の行方を占うフランス大統領選は7日、決選投票が行われ、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補(48)を破り、当選した。内務省の開票結果(開票率93%)によると、得票率はマクロン氏が65%、ルペン氏が35%。

仏大統領にマクロン氏=史上最年少の39歳、ルペン氏下す-「親EU」路線継続

マクロン大統領は、経済学者の松尾匡氏のいう「レフト2.0」なので、問題は先送りされたと考えるべきでしょう。ところで、レフト2.0とは何?w
 すなわちその特徴は、(1)国家行政主導に替えて、大なり小なり市場原理を利用することを志向します。その担い手として、民間企業に加えて、NPO・NGOや地域のコミュニティに期待することになります。そして、中央集権的な国家行政の支配をなくし、地方分権と、なるべく財政を使わない「小さな政府」が志向されることになります。

 また(2)生産力主義に替えて、全く逆の反生産力主義の傾向を持つようになりました。特に、エコロジー志向が反資本主義運動の重要なモチベーションになります。「もはや成長の時代ではない」「モノの豊かさから心の豊かさへ」等々が典型的スローガンになります。

 そして(3)の労働者階級主義に替えて、脱労組依存がスローガンになります。豊かになってしまった雇用労働者は、むしろ自らの豊かな暮らしを反省するべき存在で、それに替えて、移民などの少数民族、性的少数者、被差別身分、障害者、女性などの、差別されたマイノリティのアイデンティティを認めさせることに運動の力点が移ります。「多様性の共生」がスローガンになります。

 最後に(4)については、「社会主義」を名乗る大国による侵略と支配の現実を反省し、発展途上の小国の自立性を尊重することがスローガンになります。(3)の論点とも合わせ、アメリカ一極支配とアメリカ式物質文明の世界支配に抵抗し、発展途上国の独自の文化や価値観を尊重するべきだとされます。

 こうした志向は、一言で言えば「豊かさの上に立った豊かさ批判」であったと言えるでしょう。「レフト1.0[それ以前の左翼]」の志向が、貧しい労働者を救おうというものであったことからは大きく変わったわけです。


 ところが、こうして「レフト1.0」の行き詰まった点を一つ一つ反省してできた「レフト2.0」の論点ですが、その後、現代資本主義の猛威で中間層が没落し、長期の不況が続く中で、その一つ一つがすべて裏目に出てしまうことになります。

 (1)の市場原理の利用や「小さな政府」志向は、財政的保障が乏しい中で、行政がNPOや地域コミュニティを安上がりに利用することにつながりがちでした。そして、ドイツのシュレーダー社民党政権の雇用流動化政策に典型的に見られるように、しばしば企業ばかりに有利な競争強化政策がなされました。結局、搾取も貧困も新自由主義とたいして変らないじゃないかということになります。また、(2)の反生産力主義とエコロジー志向は、ゼロ成長をいいことのように見る論調をもたらしました。その結果、総需要拡大政策に後ろ向きになり、不況を長引かせ、失業問題を深刻化させてしまいました。特に日本についてそのことが強調されます。

 こうして新自由主義時代にもまして、低賃金で雇用が不安定な労働者や長期の失業者が大量に生み出されたのですが、その中で(3)の論点はどのように人々にとらえられたでしょうか。今や、先進国主流アイデンティティ層の、かつて豊かさを享受していた中間層が没落の危機に直面したり、あるいは実際に低賃金の不安定労働者や失業者になってしまいました。彼らはこの苦境を何とかしてくれと願っているのに、「レフト2.0」は「豊かさ」を反省しようと言って景気拡大に取り組まず、かえって財政縮小をしようとします。その一方でマイノリティの人々に対しては、中には既得権でいい思いをしている人や、エリートや資本家になった人もいるにもかかわらず、それがマイノリティだというだけで一律にひいきしているように映ります。そしてイスラム系などの移民コミュニティの中にしばしば見られる人権抑圧に対して、伝統文化を理由に無批判だったりします。先進国主流に対しては、同性愛への寛容を説き女性差別を批判して、伝統的価値観の変更を迫りながら、移民には伝統的な同性愛差別も女性差別も容認することが「多様性の共生」の実態だったりします。

 さらに、冷戦後、発展途上国の自立性を尊重する(4)の論点がもたらしたものは、ソ連の属国であった方がよっぽどマシな一層野蛮な国が続々現われたことに対して、何も言えないということでした。「レフト1.0」がソ連や中国に甘かったのは、それが「労働者の天国」であるかのように幻想を抱いていたからであり、現実を知っていたならば、昔の韓国であれインドネシアであれアフリカのどこかの国であれ、人権を抑圧する独裁政権に対しては厳しい批判的姿勢で臨んでいたはずでした。しかし、「レフト2.0」は、誰も幻想を抱いていない万人周知の人権蹂躙的独裁政権や人権蹂躙的因習に対しても、それがただ外国の発展途上国であるというだけで、口出しせずに放置する姿勢をとりがちだったのでした。


 こうしたことが、没落の危機を感じたり、実際に貧困に陥ったりした先進国主流派の労働者大衆から、「ヨソ者ばかり大事にして俺達は救われない」との反発を生み、「裏切られた」と感じたこれらの層の人々を続々と極右に走らせたのだと思います。日本の民主党政権の挫折とその後の党勢衰退、それと対称的な安倍政権の経済政策への期待と高支持率はその一環で、目下アメリカで起こっていることもその跡をたどっているだけだと言えます。社民党の福島執行部が一生懸命やってきたことは、時代に合わせなければ衰退するとの危機感を抱いて「レフト1.0」から「レフト2.0」への転換を推進し、その結果かえってますます党を衰退させただけに終わったことだったと思います。

17年1月1日 新春書評:レフト3.0がわかる本(その1)

これに対して、台頭してきたのが、イギリス労働党のジェレミー・コービン党首や、アメリカ大統領選に出馬したバーニー・サンダース氏ら「レフト3.0」なのだが、それについては上記の記事と以下の記事を読んでね。

17年1月7日 新春書評:レフト3.0がわかる本(その2)

マクロン氏が大統領に就任しても、基本的はレフト2.0の政策が続くわけで、問題の先送りにすぎないのだ。



仏大統領にマクロン氏=史上最年少の39歳、ルペン氏下す-「親EU」路線継続

 【パリ時事】今後の欧州連合(EU)の行方を占うフランス大統領選は7日、決選投票が行われ、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補(48)を破り、当選した。内務省の開票結果(開票率93%)によると、得票率はマクロン氏が65%、ルペン氏が35%。

 EU離脱を主張したルペン氏の敗北で、歴代政権が続けてきた「親EU」路線は維持されることになった。マクロン氏は1848年の第2共和政発足時に40歳で大統領に就任したナポレオン3世の記録を塗り替え、仏史上最年少の大統領となる。

 マクロン氏は演説で「すべての国民の声に耳を傾けることが私の責務だ」と勝利宣言。ルペン氏はマクロン氏について「重大な試練を前に成功することを願う」と述べ、敗北を認めた。

 選挙戦では高止まりする失業率や相次ぐテロを受け、EU・ユーロ圏をめぐる路線や移民・難民の受け入れの是非が焦点となった。既存政党への不満が高まる中、4月23日の第1回投票では左派与党・社会党と右派野党・共和党の候補がそろって落選。2大政党不在の状態で決選投票が争われる異例の事態となった。

 マクロン氏は現行路線を維持しつつ、労働分野の規制緩和をはじめとする大胆な構造改革を推進すると主張。ルペン氏は、EU離脱や自国通貨の復活を通じて財政や通貨政策の主導権を取り戻すとともに、移民の流入を制限して治安を改善すると訴えたが、及ばなかった。

 投票率は75%前後となる見通しで、第1回投票の77.8%を下回り、1969年大統領選以来の低水準となる公算が大きい。両候補のいずれにも共感できず、棄権した有権者がいたとみられる。

 マクロン氏は、オランド現大統領の任期が切れる今月14日までに新大統領に就任。15日から組閣に着手する。任期は5年。政権の要となる首相には、女性の起用も視野に入れる考えを示している。(2017/05/08-08:52)

2017.05.08 | ├ 政治ネタ | トラックバック(0) | コメント(0) |












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