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日馬富士が貴ノ岩にケガを負わせた事件で、日馬富士が引退するそうだ。相撲界では、ケガを負わせた日馬富士よりも、相撲協会の聞き取り調査に貴ノ岩を出させない貴乃花親方が責められるという不可解な事態になっている。

しかし、八百長がデフォの相撲界なんだから、真っ当なことなんて起こるはずがないと思って見ていたら、やっぱりそうなっている。

さて、相撲界では八百長がデフォを証明したのが、スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー[著]『ヤバい経済学[増補改訂版]』(望月衛[訳]、東洋経済新報社、2007年)である。ここでは、その部分を引用する。




 相撲を支配するインセンティブの仕組みは複雑で大変強力だ。それぞれの力士には番付が与えられ、力士の毎日は番付で隅々まで影響される。いくら給金をもらえるか、付き人が何人付くか、どれだけご飯が食べられるか、どれだけ眠れるか、その他自分の成功をどれだけ楽しめるかは番付次第なのだ。番付が高いほうから66人が幕内と十両の関取で、彼らは相撲界のエリートだ。エリート集団の頂点に立てば何億円も稼げて皇族のような扱いを受けられる。上位40人である幕内力士の収入は最低でも年1700万円だ。一方、70位の力士だとそれがたったの年150万円になる。エリート以外は人生も楽じゃない。番付が下位の力士は上位の力士の世話をしなければならない。ご飯を作ったり部屋を掃除したり、そればかりか漢なら絶対触りたくない他人のナニまで洗って差し上げるのだ。そんなふうに、番付がすべてなのである。

 力士の番付は年に6回開かれる本場所の星で決まる。力士はそれぞれ、15日間毎日1番ずつ、計15番の相撲を取る。本場所で勝ち越せば(8番以上白星を上げれば)番付が上がる。負け越せば下がる。番付が大きく下がるとエリート階級から追い出されることもある。だから本場所ではいつも八つ目の勝ち星がとても重要で、番付の上がり下がりがそれにかかっている。八つ目の勝ち星は普通の勝ち星のだいたい4倍の価値がある。

 だから、千秋楽になって7勝7敗と五分の力士が勝って得るものは、8勝6敗の力士が負けて失うものよりずっと大きい。

 それなら、8勝6敗の力士が7勝7敗の力士にわざと負けることはあるだろうか。相撲では力とスピードと技が一気に集中してぶつかり合い、勝負はほんの数秒で決まることが多い。自分から投げ飛ばされるのは難しくないだろう。ちょっとの間、相撲はほんとに八百長だと想像してみよう。それを証明するにはデータをどう測ればいい?
 まず、問題の取組を取り出す。本場所の千秋楽で星が五分の力士とすでに八つ目の白星を上げている力士の対戦だ(だいたい関取全体の半分以上が7勝、8勝、または9勝で本場所を終わるので、この条件に当てはまる取組は何百もある)。千秋楽で7勝7敗の力士同士がぶつかり合う場合、八百長が行われている可能性は低いだろう。両方ともどうしても勝ちたいだろうから。10勝以上あげている力士がわざと負けることもあまりなさそうだ。そういう力士には独自のインセンティブが別にある――本場所で優勝すれば賞金は1000万円、技能賞、敢闘賞などを収れば200万円だ。

 では、次の統計を見てみよう。本場所千秋楽に7勝7敗の力士が8勝6敗の力士に当たった取組数百番が対象だ。左の数字は、その日に当たる力士2人の過去の対戦成績から計算した、7勝7敗の力士が勝つ確率である。右の数字は実際に7勝7敗の力士が勝った割合である。



 過去の対戦結果から見て、7勝7敗の力士が勝つ割合は半分をほんの少し下回る。これは納得がいく。その場所の成績も8勝6敗の力士がやや優勢だと示している。ところが実際には、7勝7敗の力士が8勝6敗の対戦相手に10番中ほとんど8番も勝っている。7勝7敗の力士は9勝5敗の対戦相手に対しても驚くほど善戦している。

 数字の上でどれほどあやしかろうが、勝率が高いというだけでは八百長の証拠にはならない。八つ目の白星にはとてもたくさんのことがかかっているので、五分の力士はこの重要な一番ではいつもより必死に戦うにちがいないわけであるし。でも、もしかしたらデータには八百長の証拠が他にもあるかもしれない。

 力士がわざと負けるインセンティブを考えてみるといい。ひょっとすると裏金をもらっているかもしれない(これはどう見てもデータには残らない)。あるいは2人の力士の間で他に何か取り決めがあるのかもしれない。相撲界のエリートたちは非常に固い絆で紡ばれていることに注意しよう。66人のエリートである関取衆はそれぞれ、2ヵ月ごとに行われる本場所で15人の相手と相撲を取る。さらに、力士はみんな、元横綱などが経営する相撲部屋に属しているので、ライバルの部屋同士でさえ結びつきは強かったりする(ちなみに同じ部屋の力士同士は対戦しない)。

 さて、7勝7敗の力士と8勝6敗の力士が、次の場所でどちらも7勝7敗でないときに当たるとどうなるか見てみよう。この場合、勝負にはさっきみたいな大きなものはかかっていない。だから、前の場所で勝った7勝7敗の力士は、同じ相手に対して、それ以前の対戦と同じぐらいの勝率になると予想できる――つまり、だいたい50%ぐらい勝つだろう。またしても80%の勝率なんて、どう見ても期待できない。

 データから実際に計算してみると、前回7勝7敗だった力士は再戦ではたったの40%しか勝っていないことがわかる。あるときは80%でその次は40%? いったいなんで?

 一番理屈に合う説明は、力士たちの間で取引が成立している、というものだ:今日はどうしても勝ちたいんで、オレに勝たせてくれたら次回はお前に勝たせてやるよ(そういうやり取りに加えてお金も絡むかもしれない)。とくに面白いのは、2人の力士が次の次に当たったときには、勝率は期待どおりの約50%に戻っていることだ。星の貸し借りはどうやら次の対戦までらしい。

 あやしいのは個別の力士の成績だけじゃない。いろいろな相撲部屋の成績を集計してみると、やっぱり同じようにおかしな動きをしている。たとえばA川部屋の力士が7勝7敗でB山部屋の力士に当たって勝ち、その後A川部屋の力士がB山部屋の7勝7敗の力士に当たったとする。この場合、A川部屋の勝率はとても低い。八百長の絵図はこのスポーツのずっと上のレベルで描かれているのかもしれない――オリンピックのフィギュア・スケートで審判が採点を交換していたように。

 日本の相撲では、八百長をしたとして力士に公式に罰が与えられたことはない。相撲協会の経営者たちはそういう疑いの声を、逆恨みした元力士のでっち上げだと言って片付けてしまう。実際、「相撲」という言葉と「八百長」という言葉が同じ文章の中に入っているだけで国民あげての大騒ぎになる。国技の品位が疑われればどこの国民だってピリピリするけれど。

 それでも、八百長が行われているという報道がときどき日本のマスコミに紛れ込むことがある。そういうマスコミの攻撃が起きるときも、相撲で八百長が行われている可能性を測るチャンスだ。つまり、もしも力士同士や部屋同士の間で本当に八百長が行われているなら、記者やテレビカメラが山ほど押しかけてくるときには用心するだろう。

 で、そんなときにはどうなっているか? データによれば、八百長報道のすぐ後に開かれた本場所では、7勝7敗で千秋楽を迎えた力士の、8勝6敗の力士に対する勝率はいつもの80%ではなくただの50%だ。データをどういじっても出てくる答えはいつも同じだ:相撲に八百長なんかないとはとても言い張れない。

 何年も前、元力士2人が八百長を大々的に暴露した――そのうえ、話は八百長にとどまらなかった。不正な取組以外にも、麻薬に不倫、賄賂に脱税、さらに日本のマフィアであるヤクザとの深いつながりまであると彼らはぶち上げた。2人は脅迫電話を受けるようになった。1人はヤクザに殺されると友だちに言って怯えていたそうだ。それでも彼らは東京の外国人記者クラブで記者会見を開くことにした。しかし、そのちょっと前に2人は亡くなった――ほんの数時間違うだけで、同じ病院で、同じような呼吸疾患で死んだのだ。警察は犯罪はなかったと宣言し、捜査は行われなかった。「2人が同じ日に同じ病院で死ぬというのはとてもおかしなことだ」と相撲雑誌の編集者である三宅充は述べている。「しかし、彼らが毒を盛られるのを見た人はいない。だから疑問があってもそれを証明することはできない」。

 殺されたにせよそうでないにせよ、2人はそれまで相撲関係者が誰もしなかったことをやってのけた――具体的な名前を挙げたのだ。先ほどの実証データに含まれる力士281人のうち、八百長をしていると名指しされた力士が29人、決して不正に手を貸さないと言われた力士が11人いる。 告発者たちが出した傍証を対戦成績のデータに加味するとどうなるだろう? 八百長と言われた力士同士の対戦では、7勝7敗の力士がだいたい80%の割合で勝っている。一方、公明正大だと言われた力士が相手だと、7勝7敗の力士の勝率は過去の対戦成績どおりだ。さらに、告発者たちがクロともシロとも言わなかった力士と八百長と言われた力士が当たった場合の結果は、八百長力士同士が当たった場合と同じぐらい偏っていた――とくに名前の挙がらなかった力士のほとんども八百長をやっている可能性がある。

前掲書、45~51頁





この本が出版された2007年には、時津風部屋力士暴行死事件が起こった。また、2010年には大相撲野球賭博問題が起きている。このときも、相撲界はこの本を黙殺したが、な・ぜ・か野球解説者の張本勲氏だけは「新自由主義者の言うことなんて信用できない!」と顔を真っ赤にして激昂していた。

今回の事件がどうなっても、相撲から八百長はなくならないだろうな。w

2017.11.29 | 時事ネタらしきもの | トラックバック(0) | コメント(0) |












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